IASB、公開草案「金融商品:予想信用損失」を公表

公開草案の概要

1)提案された減損モデル(予想信用損失モデル)は、現行のIAS第39号における発生損失アプローチと異なり、予想損失アプローチに基づく。

2)予想信用損失モデルにおいては、金融資産の信用の質に応じて、「12ヶ月の予想信用損失」または「残存期間にわたる予想信用損失」に基づいて、予想信用損失に係る引当金(expected credit loss allowance)が測定される。

3)予想信用損失モデルでは、金融資産の減損の客観的な証拠の有無により、利息収益の算定方法が異なる。

4)売掛債権及びリース債権については、簡素化アプローチが認められる


2009年11月の公開草案「金融商品:償却原価及び減損」は、金融資産の減損の測定アプローチを現行の発生損失アプローチから予想損失アプローチへ変更すること、当初認識時の予想信用損失を実効金利の一部として反映すること、及び金融資産の残存期間にわたり回収不能と見込まれるキャッシュフローを見積りその変動を即時に減損損失として計上すること、を提案している。

IASBの予想信用損失に関する規定案の目的は、予想信用損失の認識、測定、表示及び開示に関する原則を確立することである。

公開草案は、当初認識後の金融商品の信用の質の変化に応じて、異なる測定方法を提案している。 予想信用損失は与信活動のコストであり、通常は貸手への与信の対価として決定される利回りとその後の信用状況の変動として表される。 償却原価で測定される資産、売掛債権及びリース債権については予想信用損失に係る引当金、ローン・コミットメントまたは金融保証については、引当金(provision)勘定の変動として、信用状況の変動が示される。 FVOCIで測定される負債性金融資産については、その帳簿価額に反映される。いずれも信用の質に応じて、認識される損失額が異なってくる。


企業は、予想信用損失の見積りにあたって、様々なアプローチを適用することができるが、予想信用損失の見積りには以下の事項を両方とも反映しなければならない。
1) 起こりうる結果を評価し、偏りがない、発生確率で加重平均した金額
2) 貨幣の時間的価値

企業は、過去の事象、現在の状況、及び将来事象や経済状況に関する合理的で裏付け可能な予測を考慮し、予想信用損失を見積る。これらの情報は、過度なコスト及び労力を要せずに合理的に入手できるものを考慮する。



売掛債権及びリース債権に関する簡素化アプローチ
企業は、IAS第18号「収益」が適用される取引から生じた売掛債権について、「残存期間にわたる予想信用損失」を予想信用損失に係る引当金に計上しなければならない(簡素化アプローチ)。
1) IAS第18号に従い、金融取引を構成しないこと
2) IAS第18号に従い、金融取引を構成するが、企業が、「残存期間にわたる予想信用損失」を予想信用損失に係る引当金に計上することを会計方針として決定した場合(この会計方針の選択はすべての売掛債権に適用しなければならない)
3) リース債権については、企業が、「残存期間にわたる予想信用損失」を予想信用損失に係る引当金に計上することを会計方針として決定した場合(この会計方針の選択はすべてのリース債権に適用しなければならない)には、簡素化アプローチを適用する。